うまく泳いでいる気でいたのです。だれもきずつけられないようにしずかに泳いでいたのです。けれどそんなことはなくて、わたしはただひとりぼっちだっただけでした。脚鰭が酸化してつかえなくなる頃、きっとわたしも泡のひとつにでもなるでしょう。
私は地震が怖い。怖いというか、トラウマに近い。ぐらりと揺れる。緊急地震速報。最近では大型トラックが家の前を通り、カタカタと家が揺れるだけでも過剰とまでは行かないが身体が反応してしまっている。
2011年3月11日。9年前、わたしは14歳。15歳になる年だったような気がする。その時は突然訪れた。確か、卒業式の予行練習をやっていた時だったはず。突然の横揺れ。それは長く続いた。揺れる、体育館の照明。ざわめく、体育館。揺れがおさまった時、まだ身体は揺れている感覚があった。「ずいぶん大きい地震だったね」。揺れがおさまって教室に戻った時、そう思った自分がいかに呑気だったか。家に帰る。テレビは地震、津波、原発、会見。やさしいなかまのCM。しばらくして、テレビを見ることすらストレスになった。テレビから逃げた。
東北は、その中でも特に福島は、第2の故郷と言っていい場所でもある。生まれは北海道の札幌だが、父親の転勤の影響で福島県の郡山に4年間住んでいたことがある。郡山は福島県の真ん中らへんに位置しており、幸い津波や原発の影響を受けていなかった。福島県の浜通り(いわきや相馬)は特に原発の被害を受けていた。郡山にいる友達に連絡を取りたい。連絡を取りたいが、何せ住所や家の電話番号しか知らない。手紙は届くのに時間がかかる。電話は繋がるのかすらも分からない。メールアドレスもLINEも知らない。母親と仲良くしていた自分の友達の母親とが連絡を取り合っていて、無事だと連絡があったらしい。
それから。新しい年が来るたび「東北に行かないとなぁ」「東北にお金を落としたいなぁ」とぼんやり考えていた。地震から7年後が経ったある日、ポルノグラフィティ15thライヴサーキット "BUTTERFLY EFFECT"の日程に福島の郡山公演があった。ツアー詳細が出た時、大学生でそこそこ時間があったから行かなければ！という使命感に駆られた。ボーカルの岡野昭仁がインフルにかかり日程は延期になったが、延期になった日程でも春休みの終わりごろでギリギリ行けたから滑り込みで行ってきた。福島空港は山中にある印象だったから、仙台空港からJRに揺られ福島から郡山へ。
郡山だ。もう、約10年近くぶりに福島の郡山にいる。ドキドキしながら、郡山駅に降り立った。場所は、10年くらい経った今でも何となく覚えていた。懐かしさで死んだ。
JR郡山駅から真っ直ぐ続く太い道路、通称さくら通りにある謎の名称の分からない石像も残っててちょっと感動した思い出。
さくら通り。天気がよかった。暑いくらいに。
郡山の老舗パン屋大友パン。昔から変わってなくて(そりゃそうだ)よかった。ついつい店に入ってクリームボックス(郡山のご当地パン的なパン)を購入。やっぱり美味しかった。酪王カフェオレも買えばよかった。
麓山公園。自分が郡山に住んでた頃には池に水張ってあって鯉が泳いでたような気がするんだけどこの時には1部池には水すら張ってなかった。震災以降から変わっちゃったのかな……それこそ大友パンで食パンの耳を買って鯉にあげてたんだけどな。
麓山公園の隣にある21世紀記念公園。この公園も自分が行った時にはメインの遊具があるところが工事してて何も見れなかった…やっぱり21世紀記念公園も水周りが少なくなってる印象。やっぱり10年も経つと景色が変わるなぁ。
唯一変わっていないところと言えば開成山公園。野球場も併設されてて高校野球の予選とかプロ野球の試合もやったりする。あ、でも遊具が少し少なくなってたかな。このSLは住んでた頃にもあって改めて見て感動した。
帰る直前に、ふれあい科学館スペースパークに行ってきた。小学生時代によく総合の授業か何かで遊びに行ったなぁ。スペースパークだから色んな宇宙のことについての博物館みたいなところ。
10年経っていたけれど、景色も多少は変わってたけれど、変わらない部分もある。変わらない景色もある。それは匂いも。これからは、定期的に福島に遊びに行きたい。郡山だけじゃなく、会津や、いわき方面にも。福島はいいぞ。東北はいいぞ。
またそれから。福島に行った年の数ヶ月後。悲劇は繰り返されるのかと絶望したりもした。北海道の胆振東部地震。今自分が住んでいる場所でも震度5弱から6弱の揺れが来た。液状化、大規模停電。交通網、水道…インフラ全てが数日ほぼほぼダメになった。オール電化の我が家は、水は出たが電気の復旧に数日かかった。不安だった。何も準備してこなかった自分は、「北海道はあまり地震が来ないから」と、東日本大震災からの学びを活かそうとしてきていなかった。学習能力がない。いざ自分が本格的に被災をしてみないと、だ。経験は何よりなはず。
前に進むしか、ないのだ。
